統合失調症とは
統合失調症では、妄想や幻覚、感情表現の平板化や意欲の減退など、様々な症状が現れます。若年層に多くみられ、高齢になって発症するケースは少ない傾向にあります。突然、強い症状を起こすこともありますが、徐々に進行するケースもあります。症状として現れる妄想や幻覚は、統合失調症の患者様にとって、まるで現実であるかのように感じられるものです。そのため、患者様本人が症状として現れていることを自覚するのは難しい傾向にあり、ご家族など周囲の方の気づきが大切になります。100人に約1人の割合で発症すると報告され、決して他人事にできる疾患ではありません。
再発を防ぎ、病状を安定させる治療をしっかり継続していくことが大切です。
統合失調症の原因
統合失調症の発症は明確にされていませんが、以下の説が唱えられています。
1. ストレス・脆弱性仮説
気質や性格などといった「脆弱性」のある要因と、日常生活で感じるストレスが重なることで、統合失調症にかかるのではないかと考えられています。
2. 脳のドーパミン仮説
神経細胞間の情報伝達を担う神経伝達物質のうち、「ドーパミン」と呼ばれるものの影響を受けると考えられています。 ドーパミンは感情などに関わる神経伝達物質ですが、大きなストレスを抱えると過剰に分泌されてしまいます。このドーパミンが過剰に分泌されることによって、脳内の情報伝達が阻害されてしまい統合失調症を発症するのではないかと考えられています。
統合失調症の症状
統合失調症では、幻覚や妄想をはじめとした様々な症状が現れます。これらの症状のうち、陽性症状と陰性症状が広く知られており、最近では認知機能障害についても注目されるようになってきました。
陽性症状
- 監視されている感じがする
- 独り言が多い
- 一人笑いが多い
- 責められている感じがする
- 騙されている感じがする
- 他人に自分の考えを読まれている感じがする
- 悪口を言われている感じがする
- 幻聴が聞こえる
- 幻覚が見える
- 話が支離滅裂になる
など
陰性症状
- 口数が少なくなる
- 社会性がなくなった
- 部屋を片付けられなくなった
- 感情の変化が乏しくなった
- 表情が乏しくなった
- 自宅に引きこもりがちになった
など
認知機能障害
- 単純作業ができなくなった
- 物事に集中できなくなった
- 人の話を理解できなくなった
- 物事を計画的に進められなくなった
など
統合失調症の検査・診断
患者様の精神状態について問診によって評価します。
身体的な原因で精神症状が現れるケースもあるため、診察だけでなく、血液検査などの身体検査をお勧めする場合もあります。
統合失調症は身体疾患と違って、検査結果に基づいた診断が難しい疾患です。加えて、妄想・幻覚の症状がみられる疾患は他にもあります。医師による慎重な判断が必要になります。
統合失調症の治療
ドーパミン仮説に基づいて、脳内のドーパミンのバランスを整える抗精神病薬と言われる薬剤によって症状を安定させます。
また、不安や不眠などの症状に抗不安薬や睡眠薬などの薬物療法も併用する場合もあります。
基本的には薬物療法を継続して病状をコントロールしていくこととなりますが、持効性注射剤と呼ばれる方法では、2週間から4週間毎に1度(2~4週間程効果が持続します)、肩の筋肉に注射をすることで内服薬を減らせたり、止められる可能性もあります。
この場合、持効性注射に対応する経口薬剤で状態が安定していることが前提ですので、内服薬の調整や経過で検討していきます。
持効性注射剤によって内服薬の飲み忘れや、怠薬による病状悪化を未然に防ぐことができるため、社会復帰や就労継続も期待できる治療です。
統合失調症は激しい幻覚・妄想によって協力者を失い、社会的接点が乏しくなってしまう方も少なくないため、薬物療法による症状安定後はデイケア、共同作業所などの活用によって対人交流を増やし、帰属集団の確保や、社交スキルなどを獲得していくことも重要です。
当院ではデイケアを開設しています。
当クリニックのデイケアについて
当クリニックでは統合失調症の患者様をはじめ、慢性期の精神科疾患の方を対象とした、リハビリテーションとしてデイケアを実施しています。デイケアでは、グループ活動において多くの人と交流することで、規則正しい生活リズムや安心感を獲得し、日常生活に楽しみと自信を得られるようサポートしていきます。ご利用にあたり、担当医師による診察、ご家族の方の理解・協力が必要となります。詳しくはデイケアのページにてご確認ください。